従来の技術では、カーボンナノチューブを始めとする様々な形状のナノカーボンの合成時の温度が500℃程度以上必要であることから、熱的に不安定な基板上への合成が困難であり、応用上の障害となっていた。本研究は、カーボンナノチューブおよび種々の形状のナノカーボンを室温で液相中における合成方法を開発することを目的としており、従来の合成技術とは概念的に全く異なる。物質の形状評価は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)で行った。また、物質中の元素に関しては、SEM装置に付置されているエネルギー分散分光(EDS)で行った。最初に、本研究では、電気化学的手法により12テスラの強磁場中でのナノカーボンの合成を行った。その結果、磁場中合成を行うことで、長さの長いカーボンナノワイヤーが合成されることを見出した。また、熱化学気相堆積法による強磁場中での合成も試み、長いナノワイヤーが合成されることがわかった。これらの手法とは別に、室温で超音波を有機溶媒に直接照射することにより、室温での様々な形状のナノカーボンの合成に初めて成功した。実際には、有機触媒として四塩化炭素(CCl_4)を用い、金属ナトリウム(Na)とNi微粒子等の金属触媒を有機触媒中に入れ、室温で超音波を有機溶媒に直接照射を行った。超音波照射による触媒の温度上昇を抑えるために、照射は断続的に行った。その結果、照射による溶媒全体の温度上昇は数度程度以内である。本手法では、超音波により溶媒を局所的に分解し、合成を行っていることからマクロ的に見れば室温合成が可能となったと考えられる。本手法を用いたナノカーボンの合成は、熱的に不安定な基板等への直接合成の需要が見込まれ、実施可能性は高いと考えられる。今後の課題としては、本手法を用いた種々のナノカーボンの室温大量合成があげられる。
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