研究概要 |
有機物で保護・安定化した金属ナノ粒子が,ナノテクノロジーを支える材料として注目されている。本研究室では,4-シアノ-4'-ペンチルビフェニル(5CB)を保護剤とするAg/Pdナノ粒子を調製し,この添加により液晶表示素子(LCD)の応答速度を向上させることができることを報告した。本年度は,シクロデキストリンポリマー(PCyD)を保護剤とする新規ロジウムナノ粒子を創製し,これを添加したLCDの応答速度について検討した。 得られたポリ(β-シクロデキストリン)(PβCyD)保護Rhナノ粒子は,透過型電子顕微鏡観察の結果,平均粒径5.4nm,標準偏差1.8nmで均一であった。保護剤にPαCyDおよびPγCyDを用いた場合も,同様にRhナノ粒子の調製に成功した。応答速度は,液晶に電圧をかけて立ち上がり始めてから暗表示になるまでのt_rと,電圧を切り液晶が元に戻り始めてから明表示に戻るまでのt_fの測定を行い,透過率10-90%間に変化する時間で評価した。その結果,実用液晶では,ナノ粒子無添加LCDの立ち上がり時間t_r=4.2msec,立ち下がり時間t_f=37.0msecに対し,PβCyD-Rhナノ粒子添加LCDではt_r=2.4msec,t_f=16.8msecで,応答速度の向上が確認された。この応答速度の向上は,Rhナノ粒子の誘電率を上げる効果と,PβCyDが液晶のフリーボリウムを増大させることによるLCDの低粘度化によるものと思われ,シクロデキストリンポリマーとナノ粒子との複合化効果と考えられる。また,電荷保持率の結果,ナノ粒子無添加LCD98.9%に対し,PβCyD-Rhナノ粒子添加LCDは98.3%を示し,この値は二ケ月後も高い値を維持することもあわせて見出した。
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