研究概要 |
MOSキャパシタにおいて結晶歪みを付加することにより室温でSiの空乏層キャパシタンスに大きな量子効果が現れることは本研究代表者(松田)が発見したオリジナル研究であり,「ピエゾキャパシタンス効果」と呼ばれている。 この効果は結晶歪みによって縮退が解けることによってバンド端の状態密度が急激に変化することにともなう真性フェルミ準位の急激に変化に起因しているものである。最近,歪がMOSFETのしきい電圧に影響することをJi-Song Lim等(IEEE ED Letters 25,2004)が実験結果に基づいて議論しているが,この現象は以前より本研究で示したピエゾキャパシタンス効果と同様のバンド端の状態密度の変化が影響することが直接の原因と考えられる。 本年度は理論的研究としてn型Siのせん断歪によりΔ1バンドとΔ2バンドが混成した効果として変形ポテンシャルあることからピエゾ抵抗効果のπ44が大きな値をもつことを示し,ICPSにおいて発表した。 またこのMOSFETのしきい電圧やフォトダイオードの光電流効率の歪効果についての理論的モデルを実証するための実験について準備を行った。歪下で光計測やキャパシタンス計測などの汎用性があるため4点曲応力付加装置を考案・作製した。この応力付加装置はチップを鋼板に貼り付けてチップの歪をストレインセンサで測りながら,鋼板を4支点により曲げるという手法である。ストレインセンサ(協和電業),フォトダイオード,センサアンプ(浜松ホトニクス),コンピュータインターフェース(ナショナルインスツルメンツ)等を購入し,計測システムにより計測系を構築し調整した。
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