研究概要 |
本研究の目的は多岐にわたるが、ここでは理論的な側面に焦点をあてて解説する。第一は需要と供給の両面を考慮にいれた市場均衡点における1)一般化モーメント法推定量の一致性・漸近正規性の導出、2)購買パターンと人ロ動態的な情報を関係付ける付加的な情報が存在する場合の同推定量の一致性・漸近正規性の理論的導出・シミュレーション実験である。この結果は雑誌論文の2番目にある。Berry, Linton and Pakesが2004年にReview of Economic Studiesに発表した"Limit Theorems for Estimating the Parameters of Differentiated Product Demand Systems"においてはrandom-coefficients discrete-choice models of demand等の洗練されたモデルによって需要側を定式化した場合の一般化モーメント法推定量の一致性・漸近正規性を導出しているが、供給側を考慮に入れていない。これに対し雑誌論文の2番目では需要・供給の両面を考慮にいれた市場均衡点における推定量の漸近的性質を導くだけでなく、前述のPetrin(2002)のように消費者の人口動態的な情報を取り入れることによって推定の精度をあげる場合の推定量の漸近的性質を初めて理論的に明らかにした。第二は寡占状態にある供給側がベルトランゲームを行うというゲーム論的にすぐれた定式化のもとで需要と供給側の両面を考慮に入れた市場均衡におけるfull information modelに基づくベイズ推定手法の提案である。この結果は学会発表にある。応募者の知る限り、いずれも既存研究にはない新たな理論的結果もしくは推定手法の提案である。
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