研究概要 |
(1)防災計画シナリオのペトリネット化による動的支援の基礎研究:地震時防災計画は,計画的・事象の連鎖によって目的達成に至る一種のシナリオであると考え,各事象の生起前提条件(状態)と遷移状態を明示化し,遷移状態と他事象の前提状態との対応関係と,ペトリネットの特徴である結合性より事象連鎖を形成することで,防災計画シナリオをペトリネット表現化する基本枠組みを明らかにした.そして,地震農時防災計両=初期シナリオとし,各事象の阻害条件(状態)とそれをもたらす阻害事象連鎖の検討,および阻害状態の解消と阻害事象連鎖の抑止を行う計画的事象連鎖の代替案構成からなる批判的・建設的検討の動的支援道筋を示し,この道筋のどの段階でのシナリオも即時視覚型シミュレーションが実行可能であることから,この道筋の妥当性と実効性を主張した. (2)背景画像上での地震時防災計画の動的支援の適用化研究:まず,防災計両シナリオの基本構成要素は,S(空間)・H(人)・E(設備)・R(リスク)の4項とし,空間移動(S-H),煙拡散と滞留(S-R),防火シャッター作動と反転避難(S-H-E-R)等,基本部分ネットおよびそれらの結合化による部分システムネットを開発した.次に,対象事例では,背景画像上で基本4要素を特定化し,基本部分ネットに精緻化・拡張化を施し,初期シナリオのシミュレーションネットを構成し,(1)の道筋でその動的な批判的・建設的検討支援の実践性を検討した.1つは,建物内避難計画への適用化研究で,背景画像上でS-Eは明確に特定化されるが,H-Rには計画者の想定が入り,この部分の避難リスクを高くするシナリオへの展開支援が求められとし,その実践例として,出火場所の変更と避難者の多様化への展開を取り上げ,初期シナリオペトリネットを基盤にシステマテックに展開構築する手順を明らかにし,その即時シミュレーション検討から訓練や点検面での有用な示唆も得ることができた.いま1つは,地震時緊急車両の出動計画への適用で,ここでは通常時運用システムを初期シナリオとし,それを基盤に,地震時災害画像と緊急路の周辺画像とを対比し,地震時阻害を切断型ないしは制約型ネットとして結合化していくことで,地震時計画シナリオ自身を,関係者の経験智が批判的・建設的に働く形で構築支援できる可能性を示した.
|