研究概要 |
1.地下空間の浸水事故の危険度診断 地下空間浸水解析モデルにVOF法を新たに適用するなど,解析の高度化を進めた.また地下浸水解析の対象を,従来の地下街や地下鉄に加えて,ビルの地下室や駐車場のような小規模地下空間にも拡張した.解析の結果,地下空間は面積(容積)が小さいために,浸水時には水深が短時間で上昇するとともに,地下からの避難においては,地上への階段や地下室のドアが障害箇所となる可能性が高いことが明らかとなった.また浸水解析とリンクした,ネットワーク上の点群の挙動に基づく避難行動解析を実施し,地下浸水時の人間の避難行動を表現することを試みるとともに,避難対策についても考察を加えた.その結果,早期の避難勧告・指示が安全な避難に効果的であること,流入防止用の地下入口箇所への止水板やステップの設置も地下浸水を遅れさせるという点で避難対策としても有効であることが確認された.避難解析の高度化や地下浸水対策のさらなる検討が今後の課題である. 2.都市域の水難事故の危険性に関する解析 都市中小河川ならびにその周辺エリアの増水,浸水による危険性を表現できる解析モデルを開発した.都市河川の流域を考え,雨水流出と洪水氾濫を平面二次元氾濫モデルで一体化して扱うモデルを開発・整備し,長崎市内の中島川流域に適用した.昭和57年の長崎水害時の状況の再現により解析精度を確認した後,洪水氾濫時の市街地の危険性を,氾濫水の流速や水深の大きさ,さらににそれらの時間変化量を基に評価する手法を提案している.都市域河川,親水河川に潜む危険性をいかにわかりやすいスタイルで表現するかが今後の課題である.
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