研究課題
今年度の研究は主に費用関数に関する統計的推定方法(Translog型費用関数の推計)とOR的方法の関連性についての分析を中心に実施した。まずDEAに関して、前年度の成果「DEAを用いた携帯電話事業の独占性の測定」について、幾つかの問題点をとりあげ、これらを解決する方策を考案した。第一の問題点として、携帯電話市場の分析において一つの企業グループのみのデータしか考慮しておらず、競合グループのデータを考慮していないという問題点が指摘される。これについては、各グループについて費用構造が本質的に変わらないという仮定の下で、市場全体の規模と市場シェアに基づいた分析枠組みを考えることができる。第二の点として、DEAによる時系列データの取り扱いの非合理性(実はTranslog型費用関数推計にも同様の点が指摘される)が指摘される。周知のようにDEA研究ではWINDOW分析という移動平均法に似た手法が伝統的に行われてきている。しかし、移動平均法自体は時系列分析手法として問題が多く、DEAの場合はさらに移動平均と厳密には異なるため、その統一的な解釈が難しいという問題がある。この課題に対応するためには、動学的DEAについての包括的な研究を要することが新たに明らかとなった。この点に関して、Sengupta(1995)、Fare and Grosskopf(1996)などの文献に基づき、整合的なDEA分析手法を新たに開発したところである。DEA以外の成果として、Translog型費用関数推計についてDEAと同様に非効率性をとりあつかう手法を考案したことが挙げられる。特に、費用関数推計において限界費用に関する非負制約を加えることにより、パラメータの推定信頼度が増すことを確認する実証分析を行うことが出来た。これらの成果から、本研究の目的である産業組織シミュレータについて基本的な骨格を与えることが可能となった。
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International Telecommunications Society Africa-Asia-Australasia Regional Conference, 28-30 August 2005, Proceedings August
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