研究概要 |
平成16年度はモデルの構築および評価システムの構築を行った.ここでは従来から固定資産の土地価格評価に用いられてきた数量化理論I類に関する再考察を行い,重回帰分析に基づいた路線価式評価法を構築した。また,近年路線価評価に用いられて来たCox回帰分析も考慮し,土地価格を決定する要因を統計的に決定するための変数選択法に関する考察を行った、さらにこれらの分析を行うためのシステムを開発した.開発されたシステムは,不動産鑑定実務において日常的に用いられる表計算ソフトウェア上で実現されている. 具体的な成果は以下の通りである. (1)重回帰モデルに路線価式の理論的考察 従来法である数量化理論I類は重回帰分析の特殊な場合として存在している.そこで,従来の数量化理論I類における手法を踏襲して,それを重回帰分析へと発展させた.これにより,数量化理論で各カテゴリー毎に設けていた制約を自然な形で内包したモデルを構築することが可能となった. (2)変数選択法 従来の方法を重回帰分析あるいはCox回帰分析へ発展させることにより,カテゴリー(説明変数)を減らすための変数増減法を利用することが可能となった.特に,AICやBICなどのいくつかの統計的基準に基づいて,価格に対して影響を与える(あるいは与えない)要因を特定することで不要な説明変数の減少を行った.これにより,統計モデルとしての優位性が得られ,予測の精度も向上した. (3)システムの開発 ここまでの成果である「統計的手法に基づいた固定資産税路線価式評価法」を不動産鑑定実務で日常的に用いられている表計算ソフトウェアで行うことができるシステムの開発を行った。これによって,従来は評価者(地方自治体など)毎に,異なる評価法を用いて全く異なる価格を算出していた地域格差を軽減することができる.
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