研究概要 |
富士山は約10万年前から1万年前までの古富士火山と1万年前以降の新富士火山に分けられている.新富士火山については,最近の研究によりその全貌が明らかになりつつある.一方,古富士火山の活動史は,富士山の東遠方のテフラや山麓部での泥流堆積物に基づいて構築されており,泥流堆積物を構成する溶岩流などの噴出活動については不明な点が多い・また,富士火山の活動以前には,現在の小御岳付近に僅かに露出する溶岩の侵食地形や組成から,愛鷹火山と同時期に小御岳火山が活動していたと考えられているが,小御岳火山の活動の詳細に関してはほとんど分かっていない.本研究では,富士山の活動史を明らかにするため,東京大学地震研究所所有の富士山北東麓から東麓にかけての5つの掘削試料の岩相解析および地表調査をおこなった.北東麓の掘削試料の解析結果と富士火山の化学組成の比較から,小御岳火山直下にはデイサイトから玄武岩質の溶岩流および火砕物を放出する活動を行った先小御岳火山の存在が明らかとなった.一方,小御岳火山の活動は,玄武岩質安山岩質の溶岩流を主体とした活動であった.また東麓の掘削調査および地表調査の結果,古富士火山は数万年以上にわたって,ここ数千年と同様スコアの噴出を中心とした活動を続けてきた.この堆積物にうち,およそ3万年以降は降下スコリア堆積物からなるのに対し,それ以前には泥流堆積物で占められていた.この堆積物の変化は,気候変動による山頂氷河の消長によって引き起こされた可能性が高いことが明らかとなった.
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