研究概要 |
近い将来に発生が危惧される巨大地震時に対処するためには,被害の早期把握と災害対応資源の効率配分による被害最小化を目的とした「広域地震災害マネジメント」が重要となる.本研究ではライフライン施設を対象として,地震後に被害の全体規模および復旧過程を概略的に把握する方法論を開発するとともに,「広域地震災害マネジメント」の支援を目指すものである.本年度はまず,対象とする東海6県(岐阜・愛知・静岡・三重・長野・山梨)における地盤データに関して,2分の1地域メッシュ(約500m四方)の統合データベースを整備した.これに基づいて,想定東海,想定東南海および両者連動地震の3地震を想定し,東海6県における広域震度分布を推定した.さらに,得られた広域震度分布に地域メッシュ統計の人口分布を重ね合わせ,市町村,県,全域の3レベルでの広域震度曝露人口の推計を行った.さらに,震度情報に基づくライフライン機能評価モデルにこの震度曝露人口を適用して,ライフライン機能の初期被害推定と復旧過程のシミュレーションを実施した.これにより,上記の6県別の復旧曲線および全域での復旧曲線が推定でき,「広域地震災害マネジメント」を検討するための基本資料を整えることができた. また近年の地震被害を対象として,ライフライン地震時機能評価モデルの適用性について確認した.特に2004年新潟県中越地震については,供給系ライフラインの機能障害について詳しい調査を行い,その結果,兵庫県南部地震よりも低震度で機能障害が発生したことが判明した.その理由としては,ネットワーク施設の脆弱性およびネットワーク形態の両方が関与していると考えられる.また復旧プロセスを比較した結果,機能支障の解消過程には相似的関係が見出され,広域地震災害マネジメントのための重要な知見が得られた.
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