研究概要 |
霧島火山は,鹿児島・宮崎両県の県境に位置する第四紀の複成火山であり,歴史時代の噴火記録も多く残されている活火山である.現在は比較的静穏な状態にあるが,明治・大正期にはさかんに噴火していたことが知られている.しかし,その当時の噴火活動の実態についてはほとんど知られていない.本研究の目的は,この明治・大正期における霧島火山の噴火資料収集をあらためて行うとともに,それらを用いて当時の火山活動の実態を明らかにすることにある. 今年度はまず,既存資料の整理・収集を行うと同時に新たな資料の発掘を目指した.既存資料については,これまでに噴火史料として整理されている『日本噴火志』,『増訂大日本地震史料』,『日本地震史料』などを参考として,当時の新聞・出版物等から収集する.噴火資料の信憑性や素性について検討した. 一方,これまで知られていない新たな噴火資料,特に日記や写真資料の発掘については,ポスター・ビラを作成し,鹿児島・宮崎両県の教育委員会や地元の新聞社・ラジオ局・テレビ局等のマスコミを通じて,広く資料の提供を呼びかけた. その結果,明治・大正期の霧島御鉢火山は爆発的な噴火を繰り返し,周辺の広い範囲に火山灰を降らせていたことがわかった.これらの活動によって,人的被害も生じていたが,それらは登山客や猟師など,火口に近い所に偶然いた人たちであったことも知ることができた.霧島御鉢火山およびその周辺には毎年多くの登山・観光客が訪れており,噴火の際にはこれらの人たちの速やかな避難誘導が重要になるといえる.
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