研究概要 |
霧島火山は,鹿児島・宮崎両県の県境に位置する第四紀の複成火山であり,歴史時代の噴火記録も多く残されている活火山である.本研究は,明治・大正期における霧島火山の火山資料収集をあらためて行うとともに,それらを用いて当時の火山活動の実態解明を目指したものである. 明治・大正期の霧島噴火を直接示す画像資料は,それほど多く残されていない.しかし,今回の調査によって,これまで知られていなかった,いくつかの噴火画像資料を得ることができた.また,宮崎県文書センターには,当時の霧島噴火に関する資料が多数残されており,特に明治28年12月18日の御鉢火山お噴火に関する資料では当時の噴石が添えられていることがわかった.この噴石は,当時の噴火をもたらしたマグマの性質を知ることのできる貴重な試料と言える. 一方,明治生まれの二人の方々,および大正2年生まれのお一人から,大正期の霧島火山の噴火の様子について直接お話をうかがうことができた.それらのお話から,従来知られている噴火の記録よりも降灰が著しかったらしいことがわかった. 今回の調査によって得られら噴火資料は、データベースとして整理し,その検索・利用が容易にできるようにした.その結果,明治・大正期の霧島火山は爆発的な噴火を繰り返し,周辺の広い範囲に火山灰を降らせていたことがわかった.噴火による人的被害は,登山客や猟師など,火口に近い所に偶然いた人たちに限られていることもわかった.霧島火山およびその周辺には毎年多くの登山・観光客が訪れており,噴火の際にはこれらの人たちの速やかな避難誘導が重要になるといえる. 宮崎県総合博物館で,8月3日〜11月16日に「霧島火山噴火の記録」として今回の調査で得られた写真や絵を展示し,活火山としての霧島火山を紹介して噴火防災意識の向上に資した.
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