研究課題
基盤研究(C)
本研究は、(1)霊長類細胞の収集、細胞培養、(2)染色体標本の調整、(3)2D-FISH法によるメタフェイズ解析、(4)3D-FISH法による染色体3次元核内配置解析、(5)比較解析と全体の統括という流れで進められた。霊長類各種末梢血を京都大学霊長類研究所の共同利用研究により供与していただいた;類人猿2種(チンパンジー、アジルテナガザル)、旧世界ザル6種(ニホンザル、カニクイザル、アカゲザル、タイワンザル、ミドリザル、マントヒヒ)、新世界ザル5種(コモンリスザル、ワタボウシタマリン、フサオマキザル、ケナガクモザル、ヨザル)。これらの霊長類リンパ球細胞核標本に対し、1)放射状核内配置の進化的保存性、2)相対核内配置と転座染色体生成との関係について考察した。1)では、ヒト18番および19番染色体ペイントプローブ、ヒトPeriphery vs InteriorミックスDNAプローブを使用した。その結果、類人猿、旧世界ザル、新世界ザルに至るまで、18番ホモログは核周辺部に、19番ホモログは核中心付近に配置されることが確認できた。また、ヒトP vs IミックスDNAプローブを用いた3D-FISH解析により、P、I両領域のトポロジーは、進化的染色体転座が高頻度に生じているテナガザルにおいても、高度な保存性を持つことが確認できた。2)については、ヒト2p、2qホモログDNAプローブを作成し、チンパンジーと旧世界ザル6種の細胞核に対して核内配置解析を実施した。その結果、ヒト2p、2qホモログの相対核内配置は、旧世界ザル各種では空間的に離れた距離を保っていたが、チンパンジーでは1組の2p、2qホモログが高頻度に隣接して配置されることが示唆された。このことにより、進化的な染色体再編成が生じている近縁種間での染色体ホモログ領域は、互いに相対核内配置が近接している傾向を示す可能性を持つものと考えられた。
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