研究課題
1000株からなる分裂酵母の高温感受性株ライブラリー中の変異株に対して、特定の遺伝子を形質転換により導入し、機能的に相互作用する遺伝子の網羅的な同定を開始した。用いた遺伝子はDis1ならびにMtc1である。これら両遺伝子は微小管結合活性を持ち、分裂酵母の微小管機能を制御する遺伝子である。Dis1は動原体微小管と動原体の結合に必須であり、その欠損は有糸分裂の停止を引き起こす。今回のスクリーニングによりDis1と機能的相互作用を示す因子として2つの細胞周期制御遺伝子を同定した。1つは染色体凝縮に必須なコンデンシンサブユニットCut14、もう1つはDNA複製開始に必要なMCMサブユニットMis5であった。Cut14については同じくコンデンシンサブユニットの一つであるCut3がDis1と機能的相互作用することが示されており、コンデンシンの関与する染色体凝縮とDis1の機能が深く関与する可能性がより確かなものになった。Mis5については予想しなかった結果であり、DNA複製の開始、とりわけ複製のライセンシング機構がどのようにDis1の機能と関わっているのか大変興味深い。微小管機能とDNA複製の制御機構の接点、あるいはDis1の新たな機能の解明が期待される。Mtc1についても同様にCut14,Mis5が同定されたため、これらの微小管機能制御因子とコンデンシン、あるいはMCM複合体との機能的連関は生物学的に意味のあるものと考えられる。またMtc1はDis1とアミノ酸レベルで高い相同性を示すことからほぼ同じ遺伝子群が同定されると予想されたが、Mtc1の場合にはその他にもMis4,Psm1(染色体の合着制御因子)、Apc10(ユビキチンリガーゼ複合体)、Cut1(セパレース)等の多くの有糸分裂制御因子とも機能的連関を示すことが示唆された。
すべて 2004
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Genes to Cells 11
ページ: 1069-1082