研究概要 |
超好熱古細菌Aeropyrum pernix K1のバリルおよびチロシル-tRNA合成酵素についてのクローニングと発現を行い、これらの発現酵素の活性の確認をおこなった。同時に各々のアミノ酸種tRNAの酵素による認識部位の同定をおこなった。A.pernixのトータルDNAから、各アミノアシル-tRNA合成酵素遺伝子の上流あるいは下流にHis-タグを、また下流にS-タグをデザインしたプライマーを用いてPCRで増幅し、これをpCR2.1プラスミドにTAクローニングした。これらを発現ベクターであるpET30にサブクローニングし、大腸菌JM109に形質転換した後、アンピシリン耐性コロニーを選別し、ミニプレサンプルについてDNA配列を確認した。これにより目的のクローンが得られ、発現にも成功した。菌体の熱処理で大腸菌タンパク質を熱変性で除去した後、Ni^+-NTAカラムによるアフィニティークロマトグラフィーで精製することができた。tRNA転写物については、バリンおよびチロシンについて、野性型および各部位に変異を導入したtRNA転写物を作製した。これらtRNA遺伝子の上流にT7プロモーターを有する配列を依頼合成し、オーバーラップPCRで鋳型を調製し、pUC19にクローニングした。クローンを選別後、プライマー依存のPCRで、アンチコドン、識別位塩基、アクセプター部位を中心とするtRNA変異体を作製し、発現酵素による認識部位の同定を行った。バリンの系においては、予想どおり、アンチコドンの認識が非常に強く、生物界共通であったが,意外にも識別位塩基の認識が弱く、またアクセプターステム領域にも認識部位は認められず、これらの認識パターンは大腸菌とは大きく異なり,進化の過程で認識部位が大きく変化して来ていることを示唆していた。チロシンの系においては、tRNAの構造が真性細菌と古細菌とでは大きく異なっているため,認識部位の違いが予想された。アンチコドンの認識については大腸菌と共通であったが、真性細菌と決定的に異なるのは、アクセプターステム領域のC1-G72であり、進化の過程で認識部位が大きく変化していた。
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