研究課題
基盤研究(C)
進化分子工学実験から生ずる多種の変異体のDNAシーケンシングや、SNP解析のためのDNAシーケンシングは、配列がほとんど同じものの少しの違いを多量の試料に対して行う必要がある。以前から提案しているDNA複製反応を実時間で電気化学的にモニターすることによって配列を決定する並列高速シーケンサーはこの要求にマッチしている。その基本原理は、DNA複製反応が1塩基伸長に伴い、平均0.3個のプロトンが吸収されること(at pH7)に基づく。次のような段階でその実用化を検討した。(1)固定化タグ配列(ブイDNA)の固定化密度は従来のコンストラクトでも十分量を達成していたが、今回導入したヘアピン状ブイDNAのヘアピンループ中央に配置したチオUを介してゲート表面にジスルフィド結合させる方法でも、1.3x10^4分子/μm^2という十分量を達成できた。ブイDNAに対する相補タグ配列を持つ未知配列DNAのハイブリダイゼーションの効率も70%に達した。この結果、理論検出限界の10倍量の未知配列DNAを固定化できたことになる。(2)この試料DNAをブイDNAから剥離し、ブイDNAを再利用できることを確認した。(3)1対の差動型ISFETを薄型フローセルに固定化した装置を改良し、セルフプライミングDNAの10塩基長の伸長に伴うpH変化を観測し、立ち上がり時間60sで8.5mVの出力を得た。この出力は1塩基伸長を観測できる大きさである。立ち上がり時間の遅さは、本方法の特長である高速性を損なう。これは表面複製反応の遅さではなく、Microfludics技術の未熟さに起因する液間界面の平坦化に起因することが判明した。
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