研究概要 |
この研究は、多様な海産無脊椎動物・原生動物と共生する褐虫藻(Symbiodinium spp.,渦鞭毛藻のなかま)において、自由生活時に比べて共生時に発現の上昇する遺伝子を同定・解析することを目的として開始した。そのために、まず以下の3つのサンプルからRNAを抽出し、cDNAを調製した:1)クローン化された褐虫藻株PL-TS-1(クレードA)を液体培地中で培養したもの、2)褐虫藻を持たないサンゴ幼若体、3)PL-TS-1が感染したサンゴ幼若体。1-3のそれぞれから抽出したRNAを用いてcDNAライブラリーを作成した。さらに、3-(1+2)のsubtractive hybridizationを行い、subtracted cDNAライブラリーを作成した。 まず、1と2のcDNAライブラリーからそれぞれ200クローンをランダムに選び配列を決定し、cDNA配列中のGC含有量を比較したところ、平均で55%(PL-TS-1)および41%(サンゴ)と大きな差があり、多くの場合GC含有量をからサンゴと共生藻由来のcDNAを区別できると考えられた。次に、subtracted cDNAライブラリー、および上記3のcDNAライブラリーの解析から、これらサンプル中の褐虫藻由来のcDNAの占める割合は宿主由来のcDNAに比べて非常に少ないことがわかった。これらの結果から、サンゴ/PL-TS-1共生系は、サンゴの遺伝子発現の解析には適している(サブトラクション済みcDNAクローンの中に、PL-TS-1との共生により発現が上昇するサンゴcDNA2つを同定した)が、褐虫藻の遺伝子を調べるには不適であると考えられた。
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