研究概要 |
近年,分子生物学の進歩により様々な生理現象を分子レベルで論議することができるようになってきた.これに伴い遺伝産物の動態解析も個体全体から特定組織,特定器官あるいは特定細胞へと次第に局所部位で高精度な分析手法が求められてきている。我々はこれまでに,熱の発生が少なく加工精度が高い193nm ArFエキシマレーザを用いた、シングルセルサンプリングの手法を開発した。本課題では、トレニアの花弁1細胞より細胞内容物をサンプリングし,その代謝産物を分析することを通じて、花弁の成熟過程について詳細な知見を得ることを目的としている。H16年度は、当初の計画通り、(1)植物の準備・サンプリング用試料の調製、(2)花弁細胞へのレーザー照射の検討、(3)分析条件の確立について検討をおこなった、まず、(1)に関しては、挿し木による増殖により安定した試料供給が可能となった。(2)に関しては、ArFエキシマレーザ(193nm)を中空光ファイバーに導光し,ファイバー先端にアルミニウム蒸着したガラスキャピラリー(先端径〜1μm)を装着し,中を陰圧にすることによりレーザ加工部から細胞内容物をサンプリングする方法を確立した。また、(3)に関しては、得られた試料を,Nano Flow LCMSにより色素成分の分析を行うと同時にRT-PCRにより、アントシアニン類生合成に関与するCHSおよび,ANS遺伝子の検出を試み、これらが検出可能であることがわかった。現在、定量分析に向けての、超微量リアルタイムPCRについて検討を行っている。
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