研究概要 |
アトピー性皮膚炎及びかゆみを伴う慢性内科疾患などの治療に不可欠な抗かゆみ薬を開発する目的で,数種のかゆみモデルマウスを用いて,かゆみの発症及び増強メカニズムの解明と天然資源からの新規かゆみ抑制物質の探索研究を以下の様に行った. 1.先に開発した抗原特異的かつIgE抗体依存性アレルギーモデルでのかゆみ実験において,かゆみ増強時には,胸腹部大動脈血管での誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現及び血中NO量の増加が観察される,という前年度の成果を受け,今回は,かゆみとiNOS由来のNOとの関連を明らかにする目的で,iNOSノックアウト(KO)マウスでのかゆみ誘導実験を行った.その結果,iNOS-KOマウスにおいても,野生型同様に,肥満細胞などの脱顆粒惹起剤であるcompound48/80(COM)投与で,有意なかゆみ関連行動が誘発されることを新たに確認した.更に,各種阻害剤を用いた実験から,iNOS由来のNOは,脱顆粒惹起に起因するかゆみに必須ではないこと,及びヒスタミン不応答性のかゆみに関与する可能性を示唆するデータを得た. 2.前年度に引き続き,COM,かゆみ関連物質のセロトニン,血小板活性化因子,炎症部位で特異的に増加するプロテアーゼで惹起するかゆみへのマウスの回避反応(掻動作)を指標とした数種のアッセイ法を用いてかゆみ抑制効果を有する天然資源を探索した.その結果,中薬や民間薬で水虫のかゆみ抑制を目的に利用されている木槿花の活性を明らかにし,伝承薬の効果を科学的根拠で証明すると共に,活性本体を検討し,3種のフラボノール誘導体を単離,その作用メカニズムについても考察した.また,木槿花の起原植物であるムクゲからも,生薬には含まれないかゆみ抑制物質を単離し,かゆみ抑制薬開発のシーズとなる可能性を示した.
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