研究概要 |
千葉大学真菌医学研究センター保存のカンジダ・アルビカンス1002株の外に,今回,新たに収集した臨床由来の菌株108株について以下の実験を行なった. (1)新規収集株の同定確認(生理学的性状を基本としたキットを用いた.) (2)従来法での遺伝子型(A, B, C, D, E)の決定 (3)今回新しく開発した上記方法とは別の原理を用いた遺伝子型(ALTS)の決定 本研究課題での使用菌株は,千葉大学真菌医学研究センター保存株が中心であるが,原産国別検討をする際に主要3カ国(日本,ブラジル,タイ)で比較するにあたり,特に日本産株の多くは,分離時期が20〜30年以上前であったので,補正の意味も含めて,新鮮分離株を108株追加した. 保存株と新規分離株を合わせた1110株について,遺伝子型の決定を行なった.(3)の遺伝子型(ALTS)は,分担者の知花が従来より研究してきたカンジダ・アルビカンスのゲノムシーケンスに基づき,より明確な分類に適している領域を探索した結果を利用した.これら2種類の遺伝子型データと各菌株固有のバックグラウンド(分離源情報等)を統合して統計的な考察を行なった.現在までに判明したことは,分離国(日本,ブラジル,タイ)と遺伝子型(A, B, C, D, E),また,分離源(血液,皮膚,口腔)と遺伝子型(A,B, C, D, E)の関係から疫学的な特徴が見いだせた.つまり日和見真菌の代表であるカンジダ・アルビカンスについて,その基礎疾患との関係が分子疫学的に説明されそうである.また,(3)の遺伝子型(ALTS)による方法は,(2)の従来法よりさらに細分した結果を示し,これらの組み合わせにより株の個体識別が期待できた. この結果をふまえて,次年度は生理学的性状や薬剤感受性試験などと組み合わせた解析を行なう予定である.
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