1.北海道及び東北地方においてサンプリングを実施し、フローサイトメーターによる相対DNA量の測定、及びtrnF-trnL領域(葉緑体DNA)をマーカーとして雑種の判定を行なった。北海道の5地点161個体、東北地方の16地点280個体を調べた結果、北海道ではどの地点でも純粋セイヨウタンポポが8〜9割を占め、雄核単為生殖雑種は出現したが、3、4倍体雑種は存在しなかった。東北地方でも純粋セイヨウの割合は54%であり、全国平均(16%)と比較して高い値を示した。雄核単為生殖雑種は28.6%、3倍体雑種は0.4%、4倍体雑種は17%であり、2倍体在来種が分布しない東北北部〜北海道に雑種の頻度が低いことが明かになった。3種類のプライマーセットを用いてマイクロサテライト分析を行なったところ、純粋セイヨウは24もの多数のクローンからなるのに対し、雄核単為生殖雑種は12クローン、4倍体雑種はわずか3クローンであった。 2.東京都でサンプリングした24個体は、相対DNA量から見ると純粋セイヨウタンポポから3倍体雑種、4倍体雑種との間に連続的出現が見られ、人為的移入種を加えた29個体については、相対DNA量の大小と種子発芽温度との間に相関は見られなかった。 3.発芽可能温度の幅は、在来種のカントウタンポポで最も狭く(11-16℃)、3倍体雑種(16-23℃)、4倍体雑種(10-26℃)、純粋セイヨウタンポポ(12-30℃)の順に高温側に広くなった。これらの温度を東京の地表面温度の季節変化と対応させると、カントウタンポポ以外は初夏に発芽してしまうことになる。 4.東京都内の移入種タンポポ人工個体群予備調査では、実生の発生は5、6月に集中し、死亡は6、7月で、秋まで生き残った個体数は75個体中2個体で、それらも冬までに死亡した。
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