1.東京都内の移入種セイヨウタンポポ人工個体群調査では、斜面の向きが北寄りの区画では個体密度が34.8±13.2/m^2および22.2±5.0/m^2、東寄りの区画では5.6±3.4/m^2であり、東寄りの区画での低密度化が顕著であった。データは残っていないが写真から判断すれば、個体群導入時点では東寄りの区画も北寄りの区画と同様の高密度の個体群を擁していたと推察できる。 2.現地での播種実験では、北寄りの区画、東寄りの区画とも実生の発生は初夏播きでは5〜7月に見られ、死亡は6月と7月中旬に起こり、実生は全滅した。秋播きでは10月に実生の発生が見られ、北寄りの区画で54.%±32.9(%)、東寄りの区画で59.3±37.6(%)の生存率であった。なお、発芽率は秋播き時には初夏播き時の1/2〜1/3であった。 また、圃場での播種実験によると、初夏播き区では6月に発芽が集中し、実生の死亡は6月末〜7月上旬に起こり、生残率は13.8±17.6%、秋播き区ではそれぞれ9月下旬、10月、67.2±30.1%であり、生育現場での生残傾向とほぼ一致した。 人工的な播種によって、秋発芽が個体群維持に有効であることが明らかとなったが、生育現場での初夏発芽特性は、個体群維持にはそぐわない。この移入種個体群では数は少ないが夏や秋にも開花結実が見られ、北寄り区画ではそれらの種子が個体群維持に貢献している可能性が示唆された。また、東寄り区画で個体群の消滅が予想される。 3.フローサイトメーターでのDNA相対量分析の結果、上述の移入種は、ドイツ・ミュンヘン近郊やロンドン近郊で採種されたセイヨウタンポポと、DNA相対量が一致した。 4.南アルプスの山岳地帯に進出したセイヨウタンポポの事例では、3倍体雑種と4倍体雑種が亜高山帯の林道とキャンプ場で、4倍体雑種が高山帯の登山道沿いで確認された。
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