研究課題
北アルプスの立山および爺ケ岳においてライチョウロイコチトゾーン(Leucocytozoon lovati)の媒介昆虫と考えられるブユをスウィーピング法によって捕獲した。立山では、不明種を含む3属7種99個体(すべて雌)が捕集された。最も多く捕集された種はアシマダラブユ(Simulium japonicum)あった。とくに室堂平では全捕集数の94%(31/33)を占めていた。各地点とも、捕集数が春から夏にかけて増加し、夏から秋にかけて減少する傾向が認められ、ライチョウ血液細胞中におけるL.. lovati出現率の季節変動と一致していた。北アルプスで採取されたアシマダラブユおよびオオブ其(Prosimulium hirtipes)の中脇および唾液腺から検出されたL. lovatiの遺伝子断片の塩基配列は、ライチョウから検出されたものと100%相同であった。このことから、国内においてもブユがL. lovatiの媒介昆虫となっている可能性が示唆された。爺ケ岳では、ブユ科と力科の昆虫が捕集された。ブユ科は、アシマダラブユ成虫6個体(すべて雌)が捕集された。アシマダラブユは標高1,480mの樹林帯から、ライチョウ生息地である標高2,457mの高山帯で捕集された。爺ケ岳薩下の池(標高2,400m)で採取されたカの幼虫および蛹は、研究室に持ち帰った1〜5日後に羽化し、エゾヤブカ (Aedes esoensis)とハクサンヤブカ (Ae. hakusanensis)と同定された。本調査で、ライチョウ生息地域にカの生息と繁殖が認められたことから、今後、ライチョウの域内保全を考える上でブユと共にカが媒介する血液原虫やウイルスについても調査する必要があると考えた。
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