研究課題
(1)河川上流部に生息するカゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類の分布域を明らかにする調査を行った。それぞれの種の分布域から、独立した個体群を抽出、個体群間の遺伝的多様性をDNAを解析することから推定した。(2)河川上流に生息するさまざまな水生昆虫の中でもガガンボカゲロウ類、トワダカワゲラ類、ナガレトビケラ類の幼虫は河川源流域の冷たい湧水や細流に生息し、生息環境が限定されるために分散能力が低く、さらに分布が局所的で特殊な環境に適応しているため研究材料に適していることが分かった。(3)これらのグループの種内の遺伝的多様性の程度を明らかにすることによって種の環境適応力、分散能力、個体群間の類縁性について推定し、種あるいは個体群の保全をするための以下のような基礎的な知見を得た。(4)これまでに日本各地より採集された、ナガレトビケラ科12種、ガガンボカゲロウ2種、トワダカワゲラ科4種について遺伝子解析を行った。ナガレトビケラ科は、解析した地域個体群の数が少ないため種内における遺伝的変異の度合いはまだ明らかではないが、トワダカワゲラ科4種は、ガガンボカゲロウ2種と比較すると遺伝的変異が小さいことが明かとなった。従来、原始的な形態をもつと考えられていたトワダカワゲラ科は、系統的にも古い昆虫ではなく、大陸起源であり朝鮮半島から日本に入り分布を広げ、種分化は比較的新しい時代に生じたと考えられる。種内の遺伝的多様性は低く、環境の変化に対して脆弱な生物であると思われる。これら遺伝的研究はトワダカワゲラ科の保全を考える上で重要な貢献をするものである。
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Limnology (in press)
Proceedings of the 11th International Symposium on Trichoptera. (In Tanida, K., Rossiter, A(eds.)) Tokai University Press, Kanagawa, Japan.
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昆虫と自然 40(10)
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