研究課題
基盤研究(C)
アメリカス18世紀の先住民によるテクストとして、ニューイングランドのモヒーガン宣教師であるサムソン・オッカム(Samson Occom)の残した自伝のための草稿、日記、出版された説教と賛美歌集を検討した。マイクロフィルムで保存されている原典は解読がむずかしい状態であり、今回は他の研究書に転載されたテクストに依拠した。キリスト教徒となり、同朋たちにキリスト教の教えを説くことを使命と感じたオッカムは、ヨーロッパ文化と真っ向から対立した民族主義的英雄とは対照的に、その民族的な貢献が十分評価されていない。しかし、白人文化と先住民文化の接触点を歩み続けたフロンティアとしての苦闘が、前者に劣らないことは、最終的には白人社会から離れて、先住民だけのキリスト教徒コミュニティを建設するにいたる、オッカムの選択までの過程を辿れば、明らかである。キリスト教の教えに照らして、異教徒である先住民の道徳性を再認識し、キリスト教徒の先住民に対する不当な仕打ちに憤るオッカムは、先住民としての誇りを失うことなく、かえって育んでいくのであるが、同時に金も知識もあるイギリス人の力に対して無力を思い知らされたようである。18世紀末も連合して勢力を保っていたイロクォイの1部族オナイダの領地の一部に土地を譲り受け、ばらばらに存在したニューイングランドの7つのキリスト教コミュニティを率いたオッカムの移住は、自発的なものであったが、その後19世紀の強制移住を予兆している。現在も点在するリザベーションは、ヨーロッパ人によって土地を追い出された結果であるが、自主自立の道を模索し続けて維持した成果でもあったことを認識すべきであろう。ほかに19世紀のカリブの奴隷や自由クレオールの自伝を検討することで、18世紀の黒人・先住民の生き方がどのように継承されていくか、展望することができた。
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Mark Twain Studies Vol.1,no.1
ページ: 73-89
東洋大学社会学部紀要 42巻2号
ページ: 165-177