研究課題
19世紀の開始前後に、植民地化が開始される。太平洋全体の動きは既に『オセアニア史』編集とともに把握しているが、植民地下サモアでの詳細を研究中である。既に研究が行われている19世紀およびドイツ時代植民地時代(1900年〜1914年)の人種カテゴリーを巡る研究をまとめる作業を、大阪大学文学部藤川隆男氏編集『白人の構造』という論集の1章として10月に刊行となった。日本オセアニア学会の年次大会(H18年3月19-20日)にて、「サモア植民地時代の統治と人種カテゴリー その1」というタイトルで発表を行った。ここで発表したのは、サモアに植民地主義勢力が入ってきた19世紀末から、法制的に植民地となった1900年を経て、ドイツ統治が終了する1914年までである。この間に問題となるのは、植民地勢力とは別個に相前後してサモアに入植してくる白人たちとその混血子孫、及び彼らとネイティヴをコントロールしようとする植民地勢力との間の関係である。白人とネイティヴは別の権利をもち、別の領域に住むという棲み分けがある一方で、植民地化の過程で多く生じた混血は、各国列強の政策や植民地政府の政策に翻弄されることとなった。ドイツ統治下では、さらに中国人年季労働者を導入して、従来の欧米系混血の他に中国系の混血も生じ、年季労働者の管理ともども、人種政策は植民地統治の重要な政策となる。ニュージーランドの首都ウェリントンに8月18日〜9月2日の16日間の出張を行い、国立古文書館、国立図書館ターンブル太平洋図書館、ヴィクトリア大学法学部図書館にて資料閲覧。昨年度終えることのできなかった、国立古文書館図書館の史料を中心に閲覧した。ドイツ統治時代の中国人労働者関係の資料、同様にニュージーランド統治時代の中国人労働者関係の資料を閲覧・複写した。さらにヴィクトリア大学法学部図書館では、その時代の法律関係の資料を閲覧・複写した。太平洋の植民地統治全体に関わる資料のうち、閲覧の大変難しい、Arthur Gordon Stanmore卿のフィジー統治回顧録を捜索、ようやくオーストラリア国立大学図書館よりマイクロフィルムを貸借し、複写に成功。来年度は人種政策に関してこれを読み込む作業を行う。その他、人種、主として混血に関する一般的課題の図書、ホワイトネス・スタディーズ関係図書などを購入した。なお、山本が主宰する国立民族学博物館地域研究企画交流センター共同研究「オセアニア諸社会におけるエスニシティ」の研究会が、まとめの非公開シンポジウムを行い、3月で終了した。来年度にこの成果報告となる刊行を行う予定である。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (4件) 図書 (1件)
Art and Identity in the Pacific : Festival of Pacific Arts. JCAS Area Studies Research Reports (Matori Yamamoto (ed.)) no.9
ページ: 5-27
『市場とジェンダー-理論・実証・文化』比較経済研究所研究シリーズ(原伸子編) 20号
ページ: 295-313
白人とは何か?-ホワイトネス・スタディーズ入門(藤川隆男編)(刀水書房)
ページ: 157-169
Asia-Pacific Forum (Academia Sinica) no.30
ページ: 76-95