研究課題
基盤研究(C)
植民地支配の中で人種政策が必須であるのは、もとからいる被支配民とともに、よそからやってくる支配者、入植者、連れてこられる奴隷、または年季契約労働者等々の異なる人種/エスニック集団の形成する社会を、分断して支配する必要があるからである。宗主国出身の役人たちは、少人数なのに治安の維持まで行わなければならないのである。労働現場でもしばしば人種別の仕事集団が形成されて、階層制が存在していたことが多く観察されている。西サモア(現サモア独立国)の場合、ドイツ領時代・ニュージーランド時代と一貫して外来者(白人、欧米人)とネイティヴ(サモア人以外にも近隣の太平洋諸島人を含む)という2つの身分制が存在し、経済/政治/生活の場をそれぞれ異にし、全く別のコミュニティを形成していた。その間で多数のハーフ(混血)をどのように区分するかは大きな課題であった。父の国籍を受け継ぎ、全く欧米的暮らしを営む実業家もいれば、土地もなく外国語もできない無産者のハーフもいた。植民地政府は、英語の読み書き等の試験に合格するハーフには、欧米人の登録を許した。一方後年になって、一定のハーフにはサモア人登録をすることも可とした。ニュージーランド統治の終了直前は、この身分制は人々の身体の外見とは必ずしも一致しなくなっていた。また、国籍も相当混乱していた。そのような人種区分は、他の社会では独立して国民国家を形成する障碍となることが多く、今日にも尾をひくことがままあるが、西サモアでは独立に向けた統合過程で、ほとんど難なく垣根を取り払うことができた。その要因としては、1)異人種間結婚が多く、既に多くの、さまざまな比率の混血が存在していたこと、2)サモア人には伝統的土地所有や称号制度があり、被支配民でありながらメリットも多くもっていたこと。3)サモア人が主役となり、サモアの伝統的制度に基づく独立が達成できたことなどをあげることができるだろう。
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