研究概要 |
本研究の課題は,女性人材の育成を阻んでいる問題点とともに,これを変革しうる諸条件を解明しようとするところにある。そのために第一に労働組織の歴史的変動を支える諸要因の解析,第二に労働組織の現状分析という柱を立てた。本年度は予定通り,この2つの研究の柱を同時並行的に進行させた。 第一の柱に関しては関西の大手電機メーカーを対象として,労働組織のジェンダー体制の変動過程分析に着手した。主として1960年代から1970年代にかけての女性労働者層の位置づけの変遷過程を再構成するための資料収集を行った。第二には,この第一の柱と関連して,労働組織において中核的構成員とはみなされないパートタイマーの育成・活用が現段階においてどのように図られているのかをとらえようとした。第一の歴史分析を生かしながら,現段階とつなげるためである。そのためにパート店長をも生み出している東北地方の食品スーパーを事例として取り上げ,実態調査をスタートさせた。第三には,主として第二の柱へのアプローチを意図して,10年前に調査経験のある百貨店A社の現場を把握する実態調査を行い,10年間の変化を把握した。これに引き続いて,百貨店業界の中できわだって異色の女性活用を行つてきた百貨店B社の労働組織調査に着手した。 第四に以上の歴史的スパンの長い実態分析に不可欠な方法と視点を獲得するために,欧米の既存研究のサーヴェイとともにアデルファイ大学G.S.Goldburg教授のレビューをうけ,またアイルランド国立大学のT.Royle博士らとの小売業の労働編成に関する共同討議を行うため国際労働過程学会に参加した。
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