研究概要 |
1,羅森や何如璋、単士釐をはじめ、中国初期外交関係者、また日本留学した宋恕や、梁啓超・秋瑾・宋教仁ら亡命変革者や革命家にいたるまで、19世紀後半〜20世紀初に外国滞在を経験した中国知識人におけるアジア観を、その紀行文・日記・書簡等のテクストを中心に、民族コンプレックスと重層をなしながらジェンダーがいかに表象されているかを、アジアの思想連鎖の中に位置づけて分析した。男女の場合とも社会進化論によってランク付けられた人種概念が色濃く投影し、また多民族の同性・異性への眼差しにそれぞれ違いがでていることを捉えた。対日観では、対男性の評価が対女性より厳しく、それは男性のほうがよりその傾向が強く、対女性観は男女で異なる方向からの評価がみられる。女性の教育程度への評価は男性よりも女性により高いものがある。 2,絵画ニュース中心とした画像資料『清末民初報刊図画集成続編』の画像とキャプション、記事との関連を分析し、さらに纏足女性・阿片吸引男性もモデルとなる植民地文化連鎖というべき旧絵はがきや旧写真を集め(『旧明信片』等)、そのキャプション・書き込み等の分析をした。撮影者・制作者・販売者の眼差しの交差が錯綜するテクストとしての写真を使用した絵はがきの扱いの難しさが分かるとともに、眼差しの「連鎖」性を如実に捉え得た。清末の画報では、娼妓として売られる女性、出奔する女性のテーマが多くみられ、女性の職業の幅の限定性とそれが問題化されつつあることが見て取れた。
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