研究概要 |
1,この年度は国際シンポジウムに数多く招聘され、(1)韓国での中国近代思想家への関心が示されたシンポでの譚嗣同の「宇宙観と平等論」について、(2)中国の青島と上海でのシンポにおける、上海モダンガールの日本ほかとの関連での成立・その表象のありかたについて、(3)台湾の中央研究院の主催により愛知大学での開催となった、西欧のものを中心としたテクストのアジアにおける翻訳問題をめぐるシンポでの、中国の優生思想の翻訳問題について、(4)日中の思想連鎖の舞台として重要な位置をしめ、東京で孫文らによって結成された、中国同盟会百周年シンポでの、日本の化粧品会社を経営した民間人、中山太一のアジア交流に果たした役割について、昨年の中国・韓国の「反日」デモの歴史的思想的背景にも思索を及ぼしながら、研究成果論文を提出した(刊行予定の論集に収録)。 2,おもに『上海漫画』『時代漫画』『万象』等の画報類、および『節制』などの女性誌を上海・北京で調査し、画報分析をおこなった。 3,ジェンダー分析で著名なLydia H.Liu、戴錦華Tani Barlowらと国内外で交流する機会があり、理論的な問題の議論を重ねることができた。 4,近代におけるアジア間連鎖という点では研究が手薄だが、1919年まで科挙を実施していた(中国は1905年廃止)ベトナムの様子を、単なる王朝史や運動史をこえたところでの接点をみつけようと、ベトナムのハノイ・フエ・ホーチミン市(サイゴン)を訪れた。ベトナム社会科学院のハンノム研究院(漢籍が最多)・婦女家庭研究所・社会科学院図書館(旧フランス極東学院の図書館)そして国家図書館での調査をおこない、女性誌を含めて少なからず資料を収集し、また研究者とも交流ができた。ほぼ白紙に近かったベトナムをいくらかでもこのテーマでの視野にいれることができるようになったといえる。
|