研究概要 |
本年度は、理論的研究として日本における農・漁業地域の女性リーダーをとりまくイエ的あるいはムラ的価値観について考察した。地域社会の意志決定の場に参画する女性リーダー(イエ・ムラ的価値観の克服)と、農・漁業活動に力をそそぐ女性リーダー(イエ・ムラ的価値観との共存)のそれぞれの価値観についてジェンダーという視点でみた場合、どのような意味をもっているのかを考察し、それを実証につなげる必要があることが明らかとなった。 また、メンバー各自が聞き取り調査を行ない、以下のような知見を得るとともに、来年度の課題を明らかにした。1,岡山農業改良普及センターでは、女性リーダーの育成より先に経営改善を行ない女性の役割を出して後に、女性の権利を主張するという方針にある。(藤井)2,岡山NPOセンター等への聞き取り調査から、岡山県北部の農村地域におけるNPO団体に注目した。そこで女性がどのような活動を行ない、どのような指導的役割を果たしているのかを明らかにすることが課題である。(小林)3,奈良市近郊農業地域の女性リーダーは親子二代にわたってリーダー的役割をはたしている。農業家族という視点から女性リーダーをとらえていく必要がある。(木村)4,伝統的に男性が海女組合長を務めてきた志摩漁村にあって、初めて女性が海女組合長に就任した。この誕生への地域ダイナミズムおよび漁業文化の変容過程を追究していく。(木村)5,女性漁協理事が就任している熊本県離島漁業地域における漁協の合併史のあり方が、同じく女性漁協理事を輩出している広島県の採貝漁業地域と類似していることが明らかとなった。(藤井)6,岡山県離島地域では活性化策が試みられているが、女性組織はそれを側面から支援する活動を展開している。広島とあわせて活性化をめぐる男性・女性の役割関係を再考する必要がある。(研究協力者 本学院生中根)
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