研究課題
本年度は最終年度ということもあり、今までにおこなってきた調査データを理論的に位置づける作業をおこなった。地域社会が女性たちにとってどういう場であるのか。また、農・漁業地域の女性たちが創出している場の意味は何であるのか、という点に注目し、江渡狄嶺の議論を援用しながら、農・漁業地域の女性リーダーの活動指向と人材育成・普及のあり方とを考察した。その結果を過年度の調査成果および下記の調査成果とあわせ、メンバーともども報告書を作成した。また、本年度おこなった調査では以下の点が明らかとなった。1、広島県西部の漁業地域では、同一地域に3つの漁業協同組合(以下、「漁協」と略記)がある。3つの漁協それぞれの組織的特徴が、リーダーシップのあり方にも影響していることが明らかとなった。(藤井、研究協力者(前年度研究分担者):奈良佐保短期大学相談役 木村都)2、広島県東部の漁業地域では、漁村女性たちによる朝市が継続的におこなわれている。彼女たちの地域漁業振興に対する思いが、高齢にもかかわらず朝市を続ける理由であることが明らかとなった。(木村、藤井)3、長野県北西部では、3期目を迎える女性農業委員がいる。彼女の活動指向は、農家経営の男女共同参画、地域農業の男女共同参画、そして政治的場における男女共同参画へと展開している。その背景には、農村生活マイスターが習得している課題解決学習の成果があることが明らかとなった。(藤井、木村)4、岡山県の女性の社会活動への参加のあり方が、歴史的展開にもとついていることが仮説的に明らかとなった。(小林)5、岡山県の離島漁村の漁師およびその妻をめぐる人間関係について参与観察をおこなった。その結果、近代的価値観・合理主義でははかれない漁師同士のきずなが、島での生活の維持のために必要であることが明らかとなった。(研究協力者:博士前期課程修了生 藤井(中根)かの子)
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
アジアの家族とジェンダー(落合恵美子, 山根真里, 宮坂靖子編)(勁草書房)(総頁数319頁)
ページ: 207-224
日本官僚制の連続と変化-ライフコース編-(中道寛編)(ナカニシィヤ出版)(総頁数253頁)
ページ: 199-214