研究概要 |
セクシュアリティとジェンダーの不公正に関わる暴力や犯罪の問題は、1960,70年代に女性たちによってとり組み始められた。1980,90年代以降は、彼女たちはいくつかの成果をもって、世界中がうねりのように影響し合い立ち上がった。日本では、敗戦時および「売春防止法」(1956)成立時に、東京都の委託をうけ入れたシェルターG.において、セクシュアリティに関わる暴力の問題の実態について、次のように分類できる。 (1)(1946〜1954)戦争、経済、家族の養育・教育力の低下、不就学などによる、戦時下の性奴隷化を含む被害。(2)(1955〜1964)「売春防止法」による強制的な入寮など、セクシュアルワーク体験者の高い比率は一時的であり、むしろ、入寮の年齢の上昇、家族問題、したがって養育・教育の不足、性と生殖の問題(健康・権利)の比重が大きくなった。(3)(1965〜1990年代)1965年よりは、G.の入寮の方針転換があり、専ら出産のための機関となった。これらのほかに、薬物やそのほかの依存症、借金の問題、セクシュアルワークの関連がある。この期間の特徴として、非婚によるシングルマザーと、ドメスティック・バイオレンス脱出の受けいれ(今世紀以降、委託による)が注目されるようになった。 G.が対象とする女性たちにとっての課題は、暴力から身体的精神的に脱出し、医療など専門的な問題、パートナーおよび時には日本滞在のための法律問題、子どもの養育環境と住まいの整え、そして就職活動などである。これらは、(1)自治体を中心とする細やかなジェンダー施策と、(2)当事者自身がもつ自立や人間関係のためのスキルを自覚し、訓練することが必要である。そして(3)家族・親族・きょうだい、知人・友人、地域や専門的なボランタリリ・ベースのサポート、あるいはネットワークなど、身近な支援が必要になる。
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