本研究の目的は、21世紀の男性アイデンティティと日本文化変容プロセスの関連を探求することにある。本研究は女性の側からのみ語られがちな「少子化問題」を男性の側からの調査で補完することにより、女性学を超えたジェンダー研究の推進に貢献するものである。 平成17年度は、平成16年度のフィールド予備調査をふまえ、調査対象者(首都圏に在住する30代以上の未婚男性)に聞き取り調査を行った。恋愛、結婚、仕事、余暇、家族などについてフォーマル・インタビュー/インフォーマル・インタビューを実施した。これと併行して、政府白書、教科書、新聞、雑誌、小説などを中心に少子化現象と男性に関する資料を収集し、「男性性」(マスキュリニティ)がどのように表象されているかを考察した。また、「マスキュリニティ・スタディーズ」をめぐる海外の動向について、文化人類学的考察を中心にまとめた。 さらに、少子化現象の根底にある家族観の変容を探るため、平成17年6月、The Ninth Annual Asian Studies Conference Japanにおいて、パネル「The Family Revisited」に参加した。このパネルにおいて、「What is the Family for?」というテーマで変容する家族・結婚観及びジェンダー役割について学会報告を行った。同パネルに参加した海外研究者とともに、後に論文集『The Family Revisited : Working Papers』をまとめ刊行した。
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