本年度の文献調査・統計分析・現地調査から、以下のことが判明した。第一に、労働力状態において日本では専業・兼業を含め「家事が主」の女性が最大の勢力を占め、専業主婦もイギリスに比べ1割程度多いことから、「男性=仕事」、「女性=家庭」という性別役割分業が根強いと判断される。第二に、家計における所得の男女差をみると、日本では「普通勤務・職員」である配偶者女性は家計の4割弱を担うが、妻が「パートタイム・労務者」の世帯では妻の収入は家計の一割程度に止まる。この結果、「平均的勤労者世帯」では、配偶者女性の収入は、配偶者男性の12%にすぎない。一方、イギリスではカップルにおける女性の可処分所得は男性の3〜4割を占めている。平均的にみると日本はイギリスに比べ女性の所得が家計に占めるウエイトが小さい。第三に、イギリスでは時間賃金の男女格差は急速に縮小し現在2割程度(フルタイム)であるが、日本では月間賃金の性差は33%(常用労働者)と大きく、パートでは性差は一層拡大する。イギリスでは女性パートの時間賃金は男性フルタイムの62%であるが日本では女性パートの時給は男性一般労働者の44%にすぎない。全体として日本はイギリスに比べ賃金の男女格差が大きい。第四に、男女格差における差異の背景として、イギリスでは同一賃金法や性差別禁止法に基づく「同一価値労働同一賃金」原則があること、パートは、短時間労働者をさし、日本とは異なること、が指摘される。加えて、日本では終身雇用制とリンクした年功序列賃金が男性の相対的高賃金と男性片働きジェンダー・レジームを支えてきたが、イギリスでは「家族賃金」は崩壊し、平均的男性の賃金は年功賃金カーブを示さないこと、が指摘される。第五に、イギリスにおける女性労働力率上昇の背景には、育児者支援政策と、転職が多く、就職紹介業務が企業・ネットを通し活発なこと、等が指摘される。第六に、女性就業には日英共に地域差があることが指摘される。地域差の内容分析は今後の課題としたい。
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