前年度の考察に基づいて採用したロウ(E.J.Lowe)の(第一階)種的論理((1^<st> Order) Sortal Logic)の体系に様相演算子を付加してその固有公理を様相化したうえで二つの様相的固有公理をさらに追加し、その基礎論理を様相論理S5の公理系へと拡張することによって得られる種的様相論理(Sortal Modal Logic)の体系SS5を構成した。そして、その形式存在論的意義についてアリストテレスの様相三段論法と比較しながら考察した結果、その体系が実体主義的な存在論を体現していることが確認された。その内容を第45回哲学会シンポジウム「様相の論理と形而上学」の講演者として発表し、それに基づいて論文「種的様相の論理と形而上学」を著した。 また、体系SS5をさらに部分化して得られる部分種的様相論理の体系PSS5の基礎となる単純部分論理SPL (Simple Partial Logic)のタブローによる証明論を構成したうえでSPLが採用する部分意味論(Partial Semantics)の論理哲学的意義について考察し、真偽概念や肯定・否定概念の強弱を表す外延的(真理関数的)な真理様相の論理として部分論理を捉えられることを確認した。その結果を論文「外延的真理様相の論理としての部分論理」として発表した。 以上の主要成果の他に、日本現象学会第28回研究大会シンポジウムII「現代のオントロジーと現象学」において「フォーマル・オントロジーの諸相」という題目の講演を行い、現象学と分析哲学に発する二種の哲学的形式存在論が混合的にオントロジー工学という知識工学の一分野において応用されている様を検分することによって、両者間のいくつかの基本的共通性を指摘した。また、実体主義的存在論に基づいて、パラドクスが生じ得るような過去へのタイムトラベルの不可能性を立証した論文‘Do Time Travelers Suffer from Paradoxes?'を発表した。
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