自由主義的・個人主義は、近代主体の<根無し草的な>あり方と共同性の喪失と荒廃等の帰結をもたらすとされ、様々な形態の共同主義、共和主義、伝統主義からの異議申し立てを受けている現状である。 16年度は主に以上のような観点から、ミル、バーリン、ハイエク、オークショット、ヘーゲル、バーク、テイラー、セン、ヌスバウウム等イギリス、ドイツ、アメリカの思想家達が、近代自由主義の主体概念を支える<プルーデンス>概念をどう評価しているのかを洗いだす作業を中心に研究を進めた。 そのための作業の一部として、16年度8月9〜20日イギリスとドイツでの資料収集を中心とした調査と研究を行い、スコットランド啓蒙主義の有力な研究者ロビン・ダウニー教授(グラスゴー大学)をはじめとする研究者との情報交換や議論を行った。主な調査場所としては、ブリティッシュ・ライブラリー、グラスゴー大学、オックスフォード大学(ボードリアンライブラリー)、ベルリン大学のそれぞれの図書館で広く関係資料を収集、調査研究を行った。 また、国内の大学附属図書館とくに神戸大学、大阪大学、宇都宮大学等の該当機関において、政治・経済思想における<自由>・<プルーデンス>概念にかかわる日本語文献の調査・収集も進め、問題の所在を確認するとともに、今後の研究方向に大きな示唆をえた。
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