研究概要 |
研究計画に従って、研究代表者及び分担者の各自が各担当分野で「自由」と「他者」概念の検討をテキスト読解を基礎としつつ遂行し、その成果を発表した。 研究代表者は、古代ヘブライ思想における他者と自由の問題について、様々な研究成果を公にした。キリスト教学会では「旧約的一神教の再構築」という基調講演を、また旧約学会のシンポジウムでは「預言者と申命記主義」というシンポジウム発題をして、それぞれ、同名の論文として発表した。またギリシアとヘブライの倫理思想を比較した英語の著作.A Comparative Study of the Origins of Ethical Thought : Hellenism and Hebraism, Rowman & Littlefield Publishers,2005,281+xviiipp.を上梓し、また『旧約聖書の思想24の断章』の改訂版、講談社学術文庫として、『倫理思想の源流-ギリシアとヘブライの場合』の改訂版を放送大学教育振興会から出版した。 研究分担者は、「自由」については国際学会で口頭発表し、プラトンの文化論がグローバリゼーション化されている現代文化に批判的であらざるを得ないのは彼が独自の自由観を有しているからだと明らかにした。また「他者」については研究成果報告書にて、他者を理解不可能性と規定すると、ソクラテスは私たちにとって他者であるが、しかし他方で多くの人にとっては他者である対話相手や感情はソクラテスにとっては他者でありえないのではないかという疑念が生ずることを指摘した。その上で通常他人との関わりで理解される正義をプラトンがむしろ魂の調和として把握するのは、ソクラテスがすでに正義をそのように把握しているからこそであると主張した。
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