研究課題
本研究は、西洋思想、東洋思想、日本思想、科学史・科学論など、様々な領域の専門家が、学際的、比較思想的な視野に立って、現実的諸存在の「有限性」がいかなる哲学的基礎付けの下に理解されてきたかを明らかにすることを目指すものである。本年度の主な研究成果は次の通りである。山岡悦郎は、有限性と対比される無限性の概念が可能無限と実無限の二つに分けられることを踏まえ、その二つの無限観が論理学や数学の歴史のなかでどのように展開されてきたかを検討した(「無限と論理」)。伊東祐之は、デカルトにおいて有限と無限という概念がどのように捉えられているかを、主に彼の神観との連関を重視しながら考察した(「デカルトにおける有限と無限」)。片倉望は、中国の道家、儒家において、人間の生の有限性と対比されている無限という概念がどのような意義をもつものなのかを検討した(「有限と無限」)。遠山敦は、伊藤仁斎において「性」の有限性が無窮の「道」との関係でどのように理解されているかを考察した(「伊藤仁斎における「性」の有限性理解について」)。今泉智之は、プラトンにおいて神の無限な性格が人間の有限性とどのような仕方で対比されているかを検討した(「人間の有限性と神--プラトンに即して--」。久間泰賢は、Jnanasrimitraの刹那滅論証における主題と論証因についてのある解釈には、同一内容の論証を無限に行わなければならなくなることが含意される可能性のあることを示唆した(「刹那滅論証における主題的属性(paksadharmata)をめぐる一考察」)。このうち山岡と片倉の論文は、草稿を、本研究に関わるすべてのものが参加した三重大学における研究会で検討した結果発表されたものである。またこれらの個別研究を踏まえて、『有限と無限』(三重大学出版会)を刊行しえたことは、本年度の特筆すべき成果である。
すべて 2006
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論集(三重大学人文学部哲学・思想学系、教育学部哲学・倫理学教室) 12
ページ: 27-36
ページ: 14-26
ページ: 144-166
ページ: 167-186
有限と無限(三重大学出版会)
ページ: 67-79
ページ: 87-98