研究課題/領域番号 |
16520017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 助教授 (20314073)
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研究分担者 |
水谷 雅彦 京都大学, 文学研究科, 助教授 (50200001)
伊藤 和行 京都大学, 文学研究科, 助教授 (60273421)
津田 一郎 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10207384)
坂東 昌子 愛知大学, 法学部, 教授 (20025365)
喜多 千草 関西大学, 総合情報学部, 助教授 (10362419)
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キーワード | chaotic model / empirical testability / statisitical test / holisitic structure / simulation / history of computatic / philosophy of biology / informatics |
研究概要 |
前年度は、実証段階におけるカオス研究における哲学的・方法論的問題の洗い出しに取り組んだが、本年度は、それを踏まえ、それらの問題を解決するための糸口をつかむことを目指した。そのため、科研のメンバーが集まる全体集会を京都大学で二回開催し、加えて、主として関西在住のメンバーが出席する研究会を同大学で随時開いた。(その研究成果の一端は西山によって海外の学会で発表された。)また、京都大学で数理哲学・科学史を専攻する大学院生等の協力を得て関連する資料を収集し、それらを研究会での討議に供した。これらの共同研究の成果は、17年度末に発行された研究報告書に収められた諸論文に結実した。その詳しい内容は同報告書に譲るが、ここでは本研究の一般的な特徴と具体的な成果を一項目づつ簡単に記しておきたい。 (一)本研究の一般的な特徴は、カオス・モデルの実証にまつわる問題に取り組むさいに、単にカオス研究のみならず、広く数理科学の他の分野やその歴史を視野に入れた考察を行ったことにある。具体的には、現代生物学における様々な哲学上の問題や情報理論の歴史、さらには電子計算機を用いたシミュレーションの歴史などを論じた上で、カオス研究の特質を明らかにした。 (二)カオスの実証に即して、科学的実証の全体論的(ホーリスティック)な構造が明らかにされた。それ自身の検証が困難なカオス・モデルの実証は、検証可能な他のモデルと一定の理論的なフレームワークを構成し、そのフレームワーク全体が実証されることで、カオス・モデル自体も実証されるという仕方で行われてきたことが判明した。このことは、カオス・モデルの実証可能性は、より大きな理論的な枠組みのそれに依存していること、カオス研究における実証のユニットは、カオス・モデルではなく、それをも含んだより広い理論フレームワークであることを意味しているのである。
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