「特殊教育」という概念が法制度的に見直され「特別支援教育」への転換が計られている今日、「特殊教育」の概念自体が消え去ろうとしている。これは、人間学的に見て、いったいいかなる意味をもつ転換であろうか?哲学は相変わらず先行するラディカルな現実の変化に遅れながら追思考するだけなのか。そういう陰口が聞こえてきそうであるが、しかしまさにこのような時代であればこそ、われわれが意図するような、「一般」教育に対する「特殊」教育の関係が、「人間とは何か」という視点から、改めて問い直されなければならないであろう。山田と谷田は、このような現状を踏まえて、定例研究会(隔月開催)において、I.カントとM.シェーラーの人間学を特殊教育学の視点から見直す基礎研究を続けてきた。 秋に予定されていた、海外研究協力者M.タールハマー氏(元ヴュルツブルク大学教授)を招聘しての研究発表会は、氏の健康上の理由から、実現しなかった。そこで平成17年3月15日から25日まで、山田が渡独して、定例研究会の結果を、「哲学的人間学とその隣接領域、特に特殊教育学の根本の問いを顧慮して」をテーマとする共同研究会(ミュンヘン)にて発表することになった。発表テーマは「人間学的な意味における特殊教育学の特殊性について」(Uber die Sonderheit der Sonderpadagogik im anthropologischen Sinne)である。また、この研究会では、バイエルン州の特別支援教育施設をいくつか訪問する研修も予定されている。 なお、この研究と関連して併行して行われている大阪産業大学産業研究所の長期的共同研究組織「第二期平和研究」研究報告論文集『平和学論集III』(2005年3月)は、研究代表として山田が責任編集したものであり、山田は生涯学習論を、谷田はカント論を寄稿した。
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