研究概要 |
平成16年度:「Nourishing Life and Becoming an Immortal : The Case of the Literati of the Wanli Period, Ming China」(東北・ケンブリッジフォーラム、於ケンブリッジ大学)では、万暦の知識人における内丹の実践への傾倒を道書出版との関係から論じた。「王者は天下を以て家と為す-万暦二十九年会試の答案を読む-」(公共哲学京都フォーラム東北会議、於東北大学)では、万暦知識人の科挙の答案における道仏二教的論理の影響を指摘した。いずれも明代荘学の思想的背景をなすことがらである。 平成17年度:「明善・観我・野同-明末における桐城方氏の家学とその継承-」(『東洋史研究』64-2・所収)および「王夫之『荘子解』における「寓庸」の立場」(『中国の思想世界』所収)と題する論文を発表し、それらを含む科研費研究成果報告書のなかに、既刊の論文である「明代荘学史研究のために」の増註・附表版を載せ、これまでの調査結果が一覧できるようにした。荘子の様々なテキストや幾多の注釈書は、厳霊峯氏所編三種の集成がその大半を影印採録しているが、本研究の目的のひとつはその補遺をおこなうことであった。調査の結果、荘義要冊(万暦八年刊、四庫未収書輯要所収)や銀南華真経三註大全(万暦二十一年刊、東北大学図書館等蔵)など、明代荘学史上、重要と思われる数点の書物を発見した。その史的位置に関しては上記報告書に論じた。本研究のもうひとつの目的は、明代の主要な荘子注に個別的な分析を加える点にあり、明末清初の王夫之による荘子解の分析結果と、方以智の薬地炮荘につながるかれの家学についての考察を公刊した。それらの思想にうかがえる「体」批判をふまえた新たな「用」もしくは「事」概念の案出に、荘子という書物がおおきく役だっていたと推察するのである。
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