研究課題
基盤研究(C)
代表者は、先に「清末初代駐英使節における西洋体験と世界像の変動に関する研究」(1996-98年度科学研究費補助金助成)において、清宋知識人における伝統的華夷的文明観から中西文明を異質なものと見なす新たな文明観への転換の様相を、初代駐英使飾メンバーの郭嵩〓(1818-91)、劉錫鴻(不詳)、張徳彝(1847-1919)における西洋認識の変化への考察を通じて明らかにした。その中で明らかになったことは、三人の中では新式教育を受けた新型人材であった張徳彝において文明観の転換力撮も明確に見出せることであった。そこで本研究では文明観の転換を最終的に推し進めた主体として、張徳彝と同様にアヘン戦争煎後の生まれ洋務運動下に成長し、後に西洋出使を経験し日清戦争後の改革論の土台をなす西洋認識をもたらした洋務世代の先進的知識人たちに注目し、彼らの文明観の転換への分析を通じて先の研究の一層の深化を試みた。具体的には曽国藩、李鴻章の幕僚として活躍した旧来型人材薛福成(1838-94)と上海広方言館で学び江南機器製造局等で活躍した新型人材鍾天緯(1840-1901)を取上げこ彼らにおげる伝統的価値観からの距離、西洋社会への観察理解の差異に留意しつつ、その中西文明比較論を検討すること通じで、清末における文明観の転換の特質を明らかにした。またあわせて彼らにおける文明観の転換が、1870年代以隆雑誌『万国公報』等において盛んに展開された西洋人宣教師の言論、特にその中西文明比較論から少なからぬ影響を受けていたことを明らかにした。総じて本研究は、中国近代思想史研究の中でも遅れた分野であった洋務運動期の西洋認識をめぐる研究の進展に、一定の貢献をなしえたと考えている。
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商学論集(福島大学経済学会) 74巻2号
ページ: 69-84
商学論集(福島大学経済学会) 74巻3号
ページ: 59-75
The Shogaku Ronshu Vol.74,No.2
The Shogaku Ronshu Vol.74,No.3
近代中国(上海.中山学社) 14輯
ページ: 261-275