研究課題
基盤研究(C)
平成16年度から平成19年度の四年間で、われわれの共同研究は合計74回におよぶ研究集会を行い、主に劉智『天方性理』の訳注作成作業を行ってきた。劉智『天方性理』訳注作業は、この四年間で、巻4および巻2の訳注が一応の完成をみた。その他の巻の訳注作業の進捗状況は以下の通りである。巻3は、全章を通じて一通り会読を済ませた。このうち第1章〜第5章については、訳文および語釈・解説の検討が行われ、第一次原稿の完成を待つ状態になっている。第6章〜第12章については、訳文がほぼ完成の域に達し、鋭意、語釈および解説の内容について検討が加えられている途上である。巻1と巻5は、本科研の代表者および研究分担者・研究協力者で構成される「回儒の著作研究会」によって平成15年度以前に一度、全章を通じて会読が行われ、とりわけ巻1については、『訳注 天方性理 巻一』(2002年3月、イスラーム地域研究第5班「イスラームの歴史と文化」研究報告)としてその訳注を発表済みである。しかし、この間の研究の進展の結果、以前のわれわれの巻1、巻5の内容理解を改める必要があることが判明した。このうち、巻5については、第1章から第7章まで会読を行った。われわれの成果は、清代中国ムスリムの代表的著作である劉智『天方性理』の思想内容を解明することによって、中国の多数民族である漢族に歴史的に強い影響を被ってきた中国ムスリム(回族)のアイデンティティの核を考察することに直結する。したがって、いわばイスラム文明との対話という世界的課題に即して中国イスラームにおけるイスラームとは何か、そして中国とは何かを考えるうえで大きな示唆を得られるところにわれわれの成果の意義が存する。
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