研究課題
基盤研究(C)
中国六朝時代(5〜6世紀)には、王朝が頻繁に交代する社会不安に満ちた時代状況のなかで、共通する危機感から生まれた儒教の識緯思想と仏教の劫災思想とが混清し、これらに影響されつつ道教の終末思想が形成されたと考えられる。本研究は、そのような終末思想を形成するいくつかの要素を比較思想史的に検討し、その形成過程と社会不安の関係を明らかにすることを目的とするものである。この作業を通じて、今日的な社会不安と宗教問題を考える手がかりを模索することを意図している。そのために3年間の研究期間内において、敦煌写本によって知られる道教経典を直接の研究対象とし、語彙および思想の各レベルにおいて儒教の識緯文献や漢訳仏教経典との比較検討を試み、問題の解明に向けての文献的基礎を構築した。初年度(平成16年度)は、東晋王朝の最末期すなわち5世紀のはじめに成立したと考えられる『洞淵神呪経』巻一「誓魔品」を取りあげた。次年度(平成17年度)は、東晋王朝の初期すなわち4世紀のはじめまでに成立したと考えられる『女青鬼律』を取りあげた。これらの経典を資料として活用するための基礎作業として敦煌写本の翻刻・校訂を行ない、さらに道蔵本と対校することにより校訂本文を作成し、現代語訳を試みて問題解明のための基礎資料を作成した。最終年度(平成18年度)は、以上の成果をもとに、六朝時代の社会不安のなかからどのような終末観が形成されたかを検討した結果、そのような危機意識が六朝道教における救済思想の形成において本質的な契機となったことを明らかにすることができた。
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東洋学研究(東洋大学東洋学研究所) 44号(現在印刷中)
ライフデザイン学研究(東洋大学ライフデザイン学部) 1, 2号
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東洋学研究(東洋大学東洋学研究所) 43号
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Oriental Studies, Toyo University vol.43
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