研究概要 |
最古の『リグヴェーダ』(前1200年頃)から古典サンスクリットに至る,「古インドアーリヤ語」に現れる動詞語形を,重要語根30前後について収集し,各語形を原典に基づいて検証の上,語形一覧を作成することを目的とする。本年度の成果の主なものは次の通りである。 1 これまでに収集してあった資料(ファイル16冊分)を整理点検し,必要な準備作業を行った。協力を予定していた院生の健康問題などもあり,予定よりやや遅れている点もある。コンピュータを更新し,データ入力されているテキストを収集点検し利用可能にするなど,研究の準備態勢は整った。 2 2004年10月にクラクフで開催された印欧語学会(Indogermanische Gesellschaft)の大会において,主題の基本部分に関連するアヴェスタの動詞について,時制と法の理解に関わる問題を中心に発表した。質疑その他からは,インド・イラン語の動詞組織のカテゴリー設定について,本報告者の見解が正しいことが改めて確認されたものと信ずる。さらに,エルランゲンの研究室を尋ね,レーゲンスブルクからも専門の同僚に来てもらうなどして話し合いをもった。ここ数年孤立して研究を進めてきたため,新知見を得る貴重な機会となった。また,多くの同僚から本研究への期待と激励が寄せられ,相互協力の約束を取り付けることができたことも,初年度の重要成果と言える。 3 昨年度,本報告者が主査として博士論文を審査した研究者(大阪大学)は,この度,接続法1人称について高水準の研究書を発表したが,出版までの協力過程で,本研究にも重要な新知見を得ることができた。他にも協力し合える学生が育ちつつあることは,広い意味で今年度の成果と言える。 4 研究発表は別記の通りであるが,これらの研究中においても,主題に関わる動詞研究が中核を担っている。
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