研究概要 |
本年度は,まず8月にトゥルファンで開催された国際トゥルファン学会に参加し,『観仏三昧海経』を編纂するための材料になったと思われる漢文仏典が,5世紀のトゥルファンで入手可能であり,トゥルファンに同経成立のための条件は具わっていたという趣旨の発表を行った.この発表は,中国語訳されて同学会の論文集に収録される予定である. 学会終了後,昨年度に引き続きトヨク石窟とバイシハル石窟の調査を行い,一部の石窟については写真撮影を行った.その後,敦煌において初期の禅観窟を調査し,さらに観経変相の見られる窟を,初期のものから後期のものにわたって観察した.トゥルファンの禅観窟と敦煌の禅観窟には多くの関連性が認められ,両者の関係については今後さらに考察を深めていく必要がある,今回は,残念ながら北区の調査は出来なかったが,禅観の実際の修行は主として北区にあるような無壁画の窟で行われていた可能性も高いので,壁画を有する禅観窟と壁画を有しない禅観窟との関係も,今後検討していきたい.また,敦煌の観経変相の,特に後期のものが『観無量寿経』の記述から相当大きく逸脱していることを実地に観察してきた.このことのもつ意味についても,来年度の研究においてさらに考察を深めたい. また,11月に韓国中央アジア学会の主催するシンポジウムLife and Religion on the Silk Roadに参加し,中央アジアの禅観に関する私の研究を,夏の調査結果をふまえて文献と美術の両面から再検討する発表を行った.この発表は,韓国語訳されて同学会の論文集に収録される予定である,また,この際ソウルの国立中央博物館に所蔵される大谷コレクションを実見できたことは有意義であった.
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