研究課題
基盤研究(C)
本研究では、インド由来のシヴァ神信仰が、ジャワやバリでどのように受容され、独自の展開をとげたか、古ジャワ語とサンスクリット語それぞれの資料の読解と比較対照研究により明らかにしようとしたものである。4年間の研究で、古ジャワ語のシヴァ教綱要書"Wrhaspatitattwa"の読解、訳注研究をおこない、電子テキスト化、データベース化を並行して進めた。本テキストの典拠については、従来指摘されていたPasupata派とのパラレル以外に、Saiva-Siddhanta派の諸文献と共通するサンスクリット偈がいくつか確認された一方、本書で定義、分類される概念の中には、カシュミール・シヴァ派の聖典"Svacchanda Tantra"と符合する偶や古ジャワ語解説も見つかった。Saiva-Siddhanta派の思想が主流としても、古ジャワ世界において、シヴァ諸派の教説が複合的に受容されていたことを示唆する。古ジャワ世界におけるシヴァ教と仏教の関係については、古ジャワ語歴史文献"Desawarnana"の読解、及び、古ジャワ語文学作品"Sutasoma"の読解を主に分析を加えた。古ジャワの仏教綱要書"San Hyan Kmahayanikan"の写本には、シヴァ教の"Wrhaspatitattwa"とパラレルなヨーガの教理が組み込まれている。また"Sutasoma"でもシヴァ教の教義への言及がある。歴史書が示すようにシヴァ教と仏教は併存しており、また、仏教の側では、自らの優越を示すためにシヴァ教を引いていることは明らかである。しかしながら、少なくとも一部のシヴァ教の教義については、古ジャワ世界において広く認知されており、ジャワ的な風土の中でインド由来の宗教がシヴァ=ブッダとして融合的な受容をされていったことが推察される。
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