実施状況:昨年に引き続き、緊密に連絡を取り合いながら各自の研究をすすめた。マクロ調査、意識調査、儀礼調査担当の木村は、昨年度収集した録音データのテープおこしおよび分析、文献資料の分析にあたるとともに、7-8月に約1ヶ月の現地調査を実施した。儀礼調査に関しては、もし可能であれば葬送儀礼、改葬儀礼の参与観察と記録をする予定であったが、滞在期間中にそれらを直接調査する機会を得ることはできなかった。しかし、過去におこなわれた改葬儀礼に関する記録(録音)とそれに関連した聞き取り調査を実施することができたので、今後これらを分析していきたい。また、インドネシアの都市社会におけるトバ・バタックの死生観に共通したパターンを見出すことができるかどうかを探るため、東北大学大学院生の相澤理沙を協力者とし、約3週間の調査をジャワ島スラバヤ市にて実施した。また、マクロ調査に関しては、公認宗教政策の地域社会への影響を探るため、新聞のバックナンバー調査に加えてローカルな範囲で流通している出版物にも注目し、それらの収集につとめた。具体的にはバタックの文化や宗教について論じた小冊子で、これを50点ほど集め、現在読解と分析を進めている。宗教財調査担当の鈴木は、8月に約1週間ジャカルタのプラサスティ博物館にて、そこに保存されているオランダ植民地時代の墓碑銘調査をおこない、1000基分ほどの墓碑銘をデジタルカメラにて撮影し、現在までのところそのうち700ほどをデータに起こし終えた。今後、このデータをもとに時代的変遷などの分析にあたる。 成果:昨年度3月26日の国際宗教史会議(年度末ぎりぎりであったため未報告)での討論で明らかになった問題点を資料の読み直しを通して軌道修正したものを6月の「印度学宗教学会」、および9月の「日本宗教学会」において口頭発表した。また、個別調査の内容について、一部まとまった部分を「研究発表」欄の論文にまとめて発表した。
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