研究概要 |
実施状況: 成果: (1)「儀礼班」の目的は、バタック人の死に関わる儀礼の場面において行われるさまざまな会話や口頭的表現に注目し、都市社会における死生観の動態を把握しようというものであった。しかし研究を推進していく過程で、彼らが定期的に催している祈祷会の重要性に気付き、そこに見られる祈りや説教などの口頭的表現にも研究の範囲を広げることとなった。その結果、祈祷会において語られる「死」に関する言説が、語り手と死者との社会的距離や、死の出来事からの時間的距離に応じて多様なニュアンスをもち、その多様な「死生観」の間でダイナミズムがみられることが明らかになった。これらの成果は成果報告書の中にまとめられるほか、今後学会、雑誌等において発表していく予定である。 (2)「宗教材調査班」では、オランダ時代からの墓地を整理したジャカルタ市内にある「タマン・プラサスティ」に集められている墓碑銘の整理を、前年度に引き続いて実施した。その結果この施設には、17世紀末以降の墓碑銘が1,200基ほど集められていることが明らかになった。それらの墓碑の中には、故人のメモリアルとしての死者の氏名、生年月日・出生地、死亡年月日・死亡地といった定型的な情報のみならず、残された者の故人に対する想いのつづられた文章が書かれていることもしばしば発見でき、それらの分析を報告書に収録した。今後そこで得られた内容と、オランダ本国で作られた墓碑銘の内容を比較することで、その当時のこの地の人々の死生観の特徴を炙り出すことができるものと思われる。
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